ラジオ放送局 ゆめのたね

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【ゆめのたね × SDGs】本当の声を聞かせてくれる「まゆうのふくし橋わたし」

2024.09.23

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ボイスレコーダー片手に走っていく。福祉の現場へどこまでも。

嬉しいことに、ゆめのたね放送局パーソナリティの活動は様々なメディア・媒体が取り上げてくださっています。

2023年10月には毎日新聞の連載「人生100年クラブ」で、シニアで活躍中のパーソナリティの方々が紹介されました。そのうちの一人が岡山県岡山市のパーソナリティ 英(はなぶさ)まゆうさんです。彼女は70歳を機にゆめのたね放送局で自身のラジオ番組「Belleden ~私の小さなお部屋から~」を開始。9年後の現在(2024年8月)も人気番組となっています。


※(写真左)上原由貴雄さん、(写真右)英まゆうさん  毎日新聞 人生100年クラブ より

そんなバイタリティー溢れるまゆうさんは、ラジオ収録のない日、ボイスレコーダーを片手に岡山県内中を飛び回っています。それはもう一つの自身のラジオ番組「まゆうのふくし橋わたし」の取材収録の為なのです。楽しく真剣に働く現場の方に触れることは、好奇心溢れる彼女にとって大きな学びであり発見の連続です。


2023年の夏、彼女は岡山県内で一番大きな商店街である表町商店街にいました。その取材先は表町商店街に何店舗ものお店を展開しているありがとうファーム ※でした。
(※事業内容は就労継続支援A型、B型の事業所、自立訓練、共同生活援助 等)

ありがとうファームは、障がい者支援事業を行っており、障がいを持った「メンバー」約90人がアートとサービスを軸に8か所の拠点で働いています。小学生たちも年間900人がアートを楽しみに来店されています。現代表 木庭康輔さんの案内のもと、まゆうさんはボイスレコーダーを片手に次から次へとお店や仕事場へ。アーティストや働き手のメンバーの方々との楽しい会話を録音していきました。

「知ることは、障がいを無くす。」

これはありがとうファームの創業者である故 木庭寛樹さんが、2021年当時のメンバーと職員に手渡した本のタイトルです。まゆうさんにとっても、この本はとても大切な一冊です。これまで長年、番組を続けてきた心の奥の想いを代弁してくれているように感じたからでした。


「知ることは、障がいを無くす。」PDF版はありがとうファームのHPからダウンロードできますので、よかったらご一読ください。


ありがとうファームのメンバーが結成しているバンド「ザ・グリーンハーツ」は、多くのイベントにも出演中

(ありがとうファーム 主なSDGs関連受賞歴)
・おかやましんきんSDGsアワード2021 優秀賞 受賞
・おかやまSDGsアワード2020 おかやまSDGsアワード 受賞 
・おかやましんきんSDGsアワード2020 最優秀賞 受賞
・ESD岡山アワード2019 地域奨励賞 受賞


あなたにも聞かせたい番組を。きっかけは点字ブロック。

まゆうさんは決して福祉の専門家ではありません。むしろ障がい福祉の世界とこれまでの人生で無縁だった彼女がなぜ、福祉の専門ラジオ番組を持つことになりここまで情熱を傾けるようになったのでしょうか。

そのきっかけは、道を歩けばどこでも目にするあの黄色いブロックでした、そう、あの「点字ブロック」です。今では日本だけでなく世界各地の都市でも普及している点字ブロックですが、実は彼女の暮らす岡山県岡山市が発祥の地なんです。(発明家 三宅精一氏によって考案。1967年に岡山市中区で世界で初めて敷設されました)

ちなみに著者の私も岡山県の生まれ育ちです。それもあってか小学校の授業で点字ブロックの重要性をよく聞かされ、遠足の際にもブロックの上は歩かないよう実地で教えてもらったのをよく覚えています。

まゆうさんはその点字ブロックの普及啓発を図る「マモちゃん基金」のメンバーとしても長年活動をしてきました。実はこの活動を通じて福祉の専門ラジオ番組を作るキーパーソンと出会うことになったのです。


点字ブロックを守る「マモちゃん基金」Facebookページより

その基金メンバーの中にいたのが清本尚哲さんでした。

清本さんが経営する株式会社 清和産業(本社 大阪市生野区)は、包装資材から日用雑貨品の製作を幅広く手掛ける企業です。また、福祉分野の商品開発や就労継続支援事業所への製造委託を行うなど障がい者福祉支援にも力を入れていることでも有名です。

岡山大学の卒業生でもある清本さんは、岡山県内の障がい者事業所や現場で働く方々の仕事環境を支援できるような新番組の構想をまゆうさんに伝えました。そして清本さんはまゆうさんへ、正式にスポンサーとしてゆめのたね放送局の新番組パーソナリティのオファーをしたのでした。

福祉分野は全くの未経験だったまゆうさんでしたが、清本さんの夢に心を動かされ新番組のオファーを快諾。2019年5月、ラジオ番組「まゆうのふくし橋わたし」はこうして放送を開始したのです。



「知らない」からこそ電光石火で会いに行く。

障がいを持つ方と健常者が同じ日常を過ごしたり同じ職場で共に働いたり…そんな経験をしてきた人は決して多くないのではないでしょうか?

企業の法定雇用率※は段階的に引き上げられつつはありますが実質的に障がいを持つ方と健常者が一緒に働く機会は日本ではないに等しいです。ましてや就労支援事業所・生活介護事業所のことを知る機会もほぼありません。
※従業員が一定数以上の規模の事業主は、従業員に占める身体障害者・知的障害者・精神障害者の割合を「法定雇用率」以上にする義務があります。法定雇用率 2024年4月〜2.3%(従業員40人以上)。2026年7月~2.7%従業員(従業員37.5人以上)

「70年生きてきても全然知らなかった」。まゆうさんもそうでした。
だからこそ彼女は自分から福祉事業所に取材に出向きます。そして現場の方の生のお声や働く方の仕事ぶり、その空気感をラジオで届けることを大切にしているのです。

リスナーの私たちはだんだんと障害を持つ方々と同じ時間を過ごしたり一緒に仕事をしている気持ちになってくるから不思議です。彼女はそれを「耳で見る」と表現しています。

番組開始当初は取材先を探すのに苦労したまゆうさん。企業や事業所への取材経験もなければ事前交渉をしたこともない、全くの未経験からのスタート。現場でお話を伺っても専門用語が分からないことも。事前に勉強しておかなければ質問すらままなりませんでした。

しかし粘り強く様々な事業所を取材するうちに徐々に喜びの声をいただけるようになり、ご紹介が増えていきました。「まゆうさん、次はここへ行ってあげてほしい」「この事業所の素晴らしい取り組み、取材して広めてあげてほしい」。

気がつけば取材希望先の予約が向こう半年埋まるまでになっていたのです。

また、番組の評判は身近なところにまで及んでいました。

障がいに関する話題が出ると「それならまゆうさんに相談してみたら?」と友人たちが自然と周りに呼びかけるようになっていたのです。まゆうさんは福祉の専門家ではありませんが、岡山県内の障がい福祉分野で活躍している方々との交流がラジオを通じて広く知られることとなっていたからです。


同じ気持ちで爆発しそうな仲間ときっと会えるよ。

様々な障がいを持つ方と触れる中で、まゆうさんの考え方にも大きな変化がありました。

ラジオパーソナリティ仲間でもある長谷川真実さんが実行委員長を務める「パラ×コレ」の活動に参加していた時のこと。その場には重度の知的障害の方も参加していました。はじめは何言っているのか理解できず、まゆうさんは色々質問してみたり会話を深めようと「努力」していたのです。そんなまゆうさんに長谷川さんはこう伝えました。

「普通にしているだけでいいよ。何にもせんでいいんよ。」

それからまゆうさんは、頑張って理解しようとするのではなく話をやめてただじっとその方たちの話を聞くようにしたのです。

「わたしの中に見えない差別があったんです」。まゆうさんはそう気付かされたと言います。

重度の知的障がいを抱えている方たちは、日常は親・家族とお医者さん以外には大人と接触する機会がほとんどありません。だから普通に話を聞いてくれる大人がそばにいてくれる、その存在だけで安心できるし本人たちにとっては幸福な時間だったのです。

まゆうさんはそれ以来「ただ自分らしくそこにいる」だけでも誰かの為になっている、それがとても嬉しいと感じられるようになったそうです。

「無理に努力して助けてあげようとするのではなく、目の前の人の日常を知ること。そうすれば壁は破れて少しだけ同じ気持ちを共有できます。それが私たちの周りから差別をなくす第一歩になると思います。」 


ふくし橋わたしの放送は、2023年12月を持ってスポンサード期間を無事満了しました。
期間中の放送回はすべて株式会社 清和産業のホームページからご視聴いただくことができます。

まゆうさんが架けてきた沢山の「橋」たち。5年8ヶ月に渡る数々の回、ぜひあなたの「耳で見て」いただけたらと思います。


まゆうさんの橋わたしの旅はまだまだ終わることはありません。

彼女にとっていつしかライフワークとなった「まゆうのふくし橋わたし」は、ジェンダーやパラスポーツなど福祉のテーマの幅をさらに広げ、自主番組として2024年も放送を継続しています。まゆうさんは、きっと今日もどこかで突撃取材をしているはずです。

そして次は、リスナーのあなたが誰かに会いにいく番かもしれません。
ドアを開けても何も見つからない。そこから遠くを眺めてるだけじゃ。

出かけよう。さあ、出かけよう。

・まゆうのふくし橋わたし が貢献するSDGsゴール

・ゴール1   貧困をなくそう
・ゴール3   すべての人に健康と福祉を
・ゴール4   質の高い教育をみんなに
・ゴール5   ジェンダー平等を実現しよう
・ゴール10    人や国の不平等をなくそう
・ゴール16 平和と公正をすべての人に


執筆:幸田リョウ (ゆめのたね放送局アドバイザー/株式会社PARK STARS 代表取締役)


ゆめのたね放送局は、2015年6月の開局から8年で全国12スタジオに広がり、ラジオ番組企画・配信を活かした「人の夢を応援するコミュニティ」も広がりを見せています。この連載【ゆめのたね × SDG】では、コミュニティデザインを専門とする私 幸田リョウの視点を交え、各地に広がる社会貢献の活動をご紹介していきます。ゆめのたねパーソナリティの番組企画・貢献活動にますますご注目いただければ幸いです。